認知症とは 症状と対処のポイントについて解説

認知症とは、脳の病気や損傷によって引き起こされる一連の症状で、記憶力や思考力の低下により日常生活に支障をきたす状態を指します。

特にアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症などが代表的です。

日本では、高齢化の進行とともに認知症患者の数も増加しており、2025年には700万人に達すると予測されています。

認知症は早期発見と適切な対応が重要であり、加齢による物忘れとの違いを理解することが必要です。

認知症とは?

認知症は、脳の病気や損傷によって引き起こされる一連の症状で、記憶力、思考力などの低下により、日常生活に支障をきたす状態を指します。

認知症の原因となる疾患は様々あります。

例えば、アルツハイマー型認知症が有名ですが、それ以外にも脳血管性認知症やレビー小体型認知症など多岐にわたります。

認知症を伴う疾患の多くに共通しているのが、脳の障害や損傷によって引き起こされるということです。

2012年の調査では、日本における65歳以上の高齢者のうち、認知症を患っている高齢者は15.0%に上り、認知症を患っている65歳以上の高齢者の数は、462万人になります。

また、2025年には認知症を患っている高齢者は約700万人に達すると予測され、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症であることを意味します。

「加齢によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違い

多くの人が経験する加齢によるもの忘れは、年齢を重ねるにつれて自然に発生する現象であり、これは一般的な老化の一部とされます。

一方、認知症によるもの忘れは、特定の病理的変化に基づく状態で、これには脳の構造や機能に重大な影響を及ぼす要因が関与しています。

このため、これら二つのもの忘れは、発生の原因や影響の範囲において大きな違いがあります。

	加齢による物忘れ	認知症による物忘れ
原因	加齢による老化	脳の病気や障害
頻度	時々忘れるが、日常生活に大きく支障はない	頻繁に忘れ、日常生活にも支障が出る
症状の進行	時間が経っても、大きく進行することがない	時間と共に症状が進行し、悪化する可能性が高い
忘れる内容	軽微な情報、名前など	新しい内容や重要な内容、日付や場所など
記憶の復元	思い出すのに時間がかかるが、後で思い出すことも多い	思い出すことが困難で、後で思い出せないことが多い
認識能力	物事の認識には問題がない	人、場所、時間を認識するのが難しくなる
物忘れの自覚	自覚はある	自覚はないことが多い
情緒の変化	概ね安定	気分の変動が激しくなり怒りやすくなる
日常生活	日常生活への影響は少ない	日常生活の自立が損なわれる可能性がある

加齢による物忘れと、認知症による物忘れの違いを理解することで、認知症の早期発見や適切な対応ができます。

加齢による物忘れは一般的には軽度で、日常生活に大きな支障をきたすものではありません。

一方、認知症による物忘れは早期に対応することが重要です。

この二つの違いを理解することにより、加齢による物忘れなのか、認知症による物忘れなのかの判別が行えるようになります。

判別が行えることにより、認知症による物忘れの早期発見や、適切な対応に繋げられます。

認知症の主な症状

認知症の症状は、認知機能低下による直接的な症状か、認知機能の低下に付随した症状かによって以下の２つに分けられます。

• 中核症状
• 周辺症状（BPSD）

中核症状

認知症における中核症状とは、記憶力の低下、思考力や判断力の衰えなどのように、認知機能低下による直接的な症状のことを言います。

具体的には以下のような症状が代表的なものになります。

• 記憶障害：特に新しい情報を覚えることが難しくなる。
• 見当識障害：時間や場所が分からなくなる。
• 判断力低下：判断、順序を立てる、計画を立てるなどができなくなる。
• 言語障害：単語が思いつかなくなったり、会話が理解できなくなる。
• 失行：ものの使用方法や身体の動かし方を忘れてしまう。
• 失認：目で見たものや、人の識別が難しくなる。

これらの認知症による中核症状は、日常生活に大きな影響を与えます。

それだけではなく、認知症の診断においても重要な要素になります。

これらの症状を早期に特定することが、自立した生活を支援するために重要です。

周辺症状（BPSD）

周辺症状（BPSD）とは、中核症状によって表れる行動の変化や、心理的な問題を指します。

代表的な周辺症状は以下の通りです。

• 徘徊：無目的に歩きまわる行動。
• 攻撃性：暴言や暴力。
• 幻覚：存在しないものをみたり、聞いたりする。
• 妄想：現実でないことを信じたりする。
• 不安・抑うつ：落ち着きなくなる、気持ちが落ち込みやすい。
• 情緒不安定：感情が変わりやすく、急に怒ったり、泣いたりする。
• 睡眠障害：夜間に目覚めることが多く、昼夜逆転になりやすい。
• 食欲不振：食事量が減少する。

認知症の周辺症状は、介護破綻を招く恐れがあります。

なぜなら、周辺症状が介護の負担を大きくするからです。

たとえば、徘徊行動がある場合、介護者は常に本人の安全を確保するために警戒しなくてはいけません。

認知症による周辺症状を緩和することは、介護者の負担の軽減にも有効です。

認知症による周辺症状は、在宅で暮らす認知症の方の中で80%の人に認められるという報告もあります。

しかし、周辺症状はすべての認知症を有する人に等しく現れるわけではありません。

個々の性格や心理状態、環境などが関係するからです。

認知症の中核症状と周辺症状を理解することは、認知症を有する人々を適切に支援するうえで非常に重要です。

早期発見と適切な介入が、症状の進行を遅らせ、生活の質を維持する助けとなるからです。

認知症の理解を深め、正しい対応をとることで、本人だけでなく家族全員がより良い生活を送ることが可能になります。

認知症の原因疾患と特徴

認知症は、脳の病気や損傷によって引き起こされる一連の症状です。

認知症にはその原因となる疾患があります。認知症の原因となる疾患として代表的なものは以下の通りです。

	アルツハイマー型認知症	血管性認知症	レビー小体型認知症	前頭側頭型認知症
原因	脳の中での、タンパク質の異常な蓄積	脳出血や脳梗塞などによる、脳の細胞の損傷	脳の中にレビー小体という異常なタンパク質の塊の蓄積	脳の前頭葉と側頭葉の損傷
割合	約70%	約20%	約5%	約1%
特徴	記憶障害からはじまることが多く、言語障害や見当識障害、怒りっぽいなどの行動変化を示すことが多い。	認知機能低下が突然起こり、段階的に進行する。脳の損傷を受けた部位により、症状が異なる	認知機能の低下に加えて、幻覚幻視、歩きにくいなどのパーキンソン症状が目立つ	抑制が効かなくなるなどの性格や行動の変化や、言語理解や発話が難しくなるなどの言語障害が特徴

これらの認知症の種類を理解することで、それぞれの特徴に基づいた適切な対応やケアが可能になります。

また、早期に正確な診断を受けることは、治療方針を決定し、本人とその家族の生活の質を向上させるために不可欠です。

認知症のある人々を支え、家族が一緒に取り組むことで、それぞれの病型に適した治療とケアが実現できるようになります。

認知症の初期症状とその対処法

認知症の初期症状

認知症の初期症状は、日常生活で徐々に現れる小さな変化から始まります。

具体的には、次のような症状が見られます。

• 物忘れ：新しいことを覚えるのが難しくなります。
• 時間や場所が混乱する：現在の日付や季節、時間、場所などの認識が乏しくなります。
• 気分の変動：些細なことで怒ったり、すぐに憂鬱になるなど気分の変動が多くなります。
• 行動の変化：社交的だった人が引きこもりがちになるなど、行動の変化がみられます。
• 意欲の低下：趣味などに無関心になり、一日中何もせずに過ごしたりします。

これらの症状は認知症以外の原因によるものかもしれません。

しかし、これらの症状が進行すると、日常生活に支障をきたす可能性があります。

認知症の初期症状への対処法

認知症の初期症状に気づいたら、まずは専門医に相談することが大切です。

早期発見と早期介入によって、症状の進行を遅らせる治療が可能になるからです。

また、日常生活をなるべく不便なく送れるように、工夫する必要があります。

日常生活の工夫としては以下のようなものが挙げられます。

• 重要な物の置き場所を一定にする
• 日記やカレンダーを使って日常のスケジュールを管理する
• 家族や友人とのコミュニケーションを活発に保つ
• 重要なことはメモに残すようにする

さらに、趣味や運動は脳を活性化させることも、認知症の予防と初期症状への対処に効果的です。

定期的に体を動かすことで血流が改善され、脳への酸素供給が増えるため、記憶力の低下を防ぎます。

アルツハイマー型認知症の人では、初期症状として名前が思い出せないことや日常的な物の置き場所を忘れることが挙げられます。

これらは脳内の神経細胞が徐々に機能を失い始めているサインです。

早期にこれらの変化を捉え、適切な治療を開始することで、認知機能の低下を遅らせ、自立した生活を長く維持することが可能になります。

認知症の初期症状を理解することは、本人や家族にとって大きな支えになります。

認知症に関する正しい知識を身に付け早期発見・早期治療を目指そう

認知症とは、脳の病気や損傷によって引き起こされる一連の症状で、記憶力や思考力の低下により日常生活に支障をきたす状態を指します。

特にアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症などが代表的です。

日本では、高齢化の進行とともに認知症患者の数も増加しており、2025年には700万人に達すると予測されています。

認知症は早期発見と早期介入が重要であり、症状の進行を遅らせることが可能です。

加齢による物忘れとの違いなど正しい知識を身に着け、認知症の早期発見を目指しましょう。