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社会保障制度の「年金」について分かりやすく解説

年金制度は、高齢者や障害者、遺族の生活を支える社会保障の柱です。

日本の年金は公的年金と私的年金に分かれていることをご存知でしょうか。

「公的年金」は国民年金と厚生年金が中心となり、すべての国民に加入が義務付けられています。

その一方で、「私的年金」は企業や個人が任意で加入できる年金で、老後の生活をより安定させるための選択肢となります。

普段あまり意識していない年金について、この記事で学んでみませんか?

太田 寛之

この記事では、年金制度の仕組みや種類をわかりやすく解説し、老後の備えに役立つ情報をお伝えします。

まずは、基本的な年金の概要から見ていきましょう。

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年金とは?


年金は、高齢者や障害者、遺族などの生活を支えるために支給される給付金です。

主に老後の生活を支える収入源として機能し、社会保障制度の中心的な役割を果たしています。

日本の年金制度は公的年金と私的年金の2種類に分かれます。

公的年金には国民年金と厚生年金があり、どちらも国が運営する強制加入の制度です。

一方、私的年金は企業年金や個人年金など、任意で加入することができます。

年金制度は「世代間扶養」の考え方に基づいています。

つまり、現役世代が納める保険料で高齢者の給付をまかなう仕組みです。

しかし、2024年現在、日本は少子高齢化が進んでおり、その持続可能性が課題となっている点には留意する必要があります。

年金の仕組み

日本の年金制度は、「3階建て構造」と呼ばれる仕組みで成り立っています。

1階部分は、すべての国民が加入する国民年金(基礎年金)で、2階部分は会社員や公務員が加入する厚生年金です。

3階部分は、任意で加入する企業年金や個人年金があり、追加的な保障を提供します。

公的年金は「賦課方式」で、現役世代が支払った保険料を高齢者の給付に充て、さらに国庫負担や年金積立金の運用収益も財源として利用されています。

年金制度の根幹である「世代間扶養」は、少子高齢化により負担が増しているため、制度の持続可能性が課題として取り組まれています。

年金の主な種類

日本の年金は公的年金と私的年金の2種類があります。

公的年金には国民年金と厚生年金があり、それぞれ老齢、障害、遺族年金という形で給付されます。

私的年金には企業年金や個人年金があり、さらに確定拠出年金(企業型、iDeCo)も存在します。

各制度には特徴があるため、それぞれ詳しく見ていきましょう。

公的年金

公的年金は、国が運営する強制加入の年金制度で、国民年金と厚生年金があります。

国民年金は20歳から60歳未満の全員が加入し、定額の保険料を支払う義務があります。

厚生年金は会社員や公務員が対象で、給与に基づいた保険料を企業と労働者が負担します。

給付は老齢年金、障害年金、遺族年金の形で支給され、老齢年金は原則65歳から支給が始まります。

以前までは原則60歳からの受給でした。

今後も健康寿命の伸びにより、受給開始年齢も引き上げられることが予想されます。

障害年金は、障害の程度に応じた金額が支給され、遺族年金は被保険者の死亡時に遺族が受け取ります。

これらは、高齢者や障害者、遺族の生活を支えるための重要な収入源です。

私的年金

私的年金は、任意で加入する年金制度で、企業年金や個人年金があります。

企業年金には、確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(DC)があり、企業が従業員の老後のために積み立てを行います。

個人年金は、個人が金融機関と契約して積み立てる制度で、税制優遇が受けられるメリットがあります。

確定拠出年金には企業型と個人型(iDeCo)があり、自分で運用先を選び、運用結果によって受給額が決まります。

公的年金について解説

ここでは公的年金について詳しく解説します。

国民年金

国民年金は、日本の公的年金制度の基礎部分であり、すべての国民が加入することが義務付けられています。

主に自営業者、学生、無職の人々が対象ですが、20歳以上60歳未満のすべての日本国民が加入します。

保険料は定額で、毎年政府により受給金額が決定されます。受給資格を得るには、原則10年以上の保険料納付期間が必要です。

65歳から老齢基礎年金として支給が始まり、定額給付が行われます。

国民年金は老後の生活費を支える基礎的な収入源であり、その重要性は非常に高いです。

現在は「年金制度が維持できない」と問題視されることも多いですが、制度自体がなくなることはあまり考えられません。

今後も国を支える重大な施策のひとつとして、機能し続けることが予想されます。

厚生年金

厚生年金は、企業や団体に勤める従業員が加入する公的年金制度で、国民年金とは異なり、給与に基づく保険料が設定されています。

保険料は労使で半分ずつ負担し、支給される年金額は生涯の給与水準に応じて変動します。給付の種類には、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金があり、それぞれ異なる状況に応じた支援を提供します。

老齢厚生年金は、65歳以降に国民年金と合わせて受給可能で、報酬比例部分が含まれるため、高収入者ほど年金額が増える仕組みです。

厚生年金は、老後の生活をより安定させるための柱となることを覚えておきましょう。

障害年金

障害年金は、病気やけがにより障害を抱えた人々に対する支援制度です。

この制度には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があります。

障害基礎年金は国民年金加入者が対象で、障害の程度に応じて1級または2級の給付が行われます。重度の障害者には1級としてより高い金額が支給されます。

それに対して、障害厚生年金は厚生年金加入者を対象とし、3級まで給付が設けられているのが特徴です。特定の条件を満たす場合、一時的な支援として「障害手当金」が支給されることもあります。障害年金は、障害者やその家族の生活を支える重要な制度です。

老齢年金

老齢年金は、高齢者に対する基本的な所得保障を提供する制度で、国民年金と厚生年金の両方から給付されます。

国民年金から支給される「老齢基礎年金」は定額給付で、全加入者に同一額が支給されます。一方、厚生年金から支給される「老齢厚生年金」は、生涯の収入に応じて給付額が変動する報酬比例部分を含んでいます。

受給開始年齢は原則65歳ですが、希望に応じて60歳からの繰り上げ受給や70歳までの繰り下げ受給も可能です。

繰り下げ受給することで1回あたりの受給額が増えるため、老後資金に余裕のある方は繰り下げも検討してみてはいかがでしょうか。

遺族年金

遺族年金は、年金加入者が死亡した際に、その遺族が受け取る公的保障です。

「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、遺族基礎年金は主に18歳未満の子供がいる配偶者、または子供自身に支給されます。

遺族厚生年金は、配偶者や子供だけでなく、被保険者の死亡時に一定の要件を満たす親や孫も受給資格があります。これにより、収入源を失った家族の生活費確保のサポートになります。

ただし、遺族年金は受給資格や条件が厳密に規定されており、事前に確認しておくことが必要です。

脱退一時金

脱退一時金は、外国人労働者などが日本の公的年金制度(国民年金や厚生年金)に一定期間加入した後に帰国する際、申請することで受け取れる一時金です。

通常、6ヶ月以上加入していた場合に申請が可能で、加入期間や保険料の総額に応じて支給額が決まります。ただし、日本に滞在している間は申請できず、帰国後に手続きを行う必要がある点には注意が必要です。

また、脱退一時金の支給を受けると、その期間分の年金加入実績が消滅し、将来的な年金給付の対象外となります。

受給に関するメリット・デメリットを正しく理解して、自分にあった年金受給のスタイルを見つけることが重要です。

寡婦年金

寡婦年金は、主に夫が死亡した際に一定の条件を満たした妻に対して支給される公的保障です。

夫が生前に10年以上国民年金保険料を納付していた場合、その妻が受給資格を得られます。ただし、寡婦年金を受け取るためには、妻自身が老齢基礎年金の受給資格を満たしていないことや、他の公的年金を受給していないことが条件となります。

寡婦年金は妻の生活費を補うための重要な制度であり、特に夫婦共働きでなかった家庭においては、妻の収入を確保する手段となります。

死亡一時金

死亡一時金は、国民年金保険料を一定期間以上納めた被保険者が、年金を受給する前に死亡した場合、その遺族に対して支給される一時的な給付金です。

通常、36ヶ月以上の保険料を納めた場合に申請が可能で、支給額は納付期間に応じて変動します。

この制度は、遺族基礎年金の受給資格がない遺族に対して、お見舞い的な意味合いで設けられたものであり、家族が生活を立て直すための一助となります。

ただし、死亡一時金を受け取ると、遺族が将来受給する可能性のあった年金が消滅するため、他の制度と比較し慎重に判断することが大切です。

私的年金について解説

ここでは私的年金について詳しく解説します。

国民年金基金

国民年金基金は、自営業者やフリーランスなどの国民年金第1号被保険者を対象とする、上乗せ年金制度です。

国民年金の基礎年金に加えて、さらに将来の年金給付を増やせます。

この制度では、加入者が複数のプランから選択して掛金を積み立てるため、将来の受給額を確保できるのが魅力です。

掛金は全額所得控除の対象となり、節税効果も期待できます。受給開始は60歳以降で、老齢基礎年金と合わせて受け取ることが可能です。

ただし、途中での解約は原則できず、受給開始前に資金が必要な場合に備える手段としては適していない点に留意する必要があるでしょう。

付加年金

付加年金は、自営業者などの国民年金第1号被保険者が利用できる追加的な年金制度です。

通常の国民年金保険料に月額400円を上乗せして支払うことで、将来的に受け取る年金額を増やせます。

具体的には、「200円 × 付加保険料納付月数」を年金額に追加します。

少額の負担で将来の給付を増やせるため、自営業者などにとっては手軽な選択肢です。

ただし、この制度には物価スライド制がありません。物価上昇による価値の目減りリスクがある点に注意が必要です。

また、「国民年金基金」とは併用できない点に注意しましょう。

厚生年金基金

厚生年金基金は、企業が従業員のために設立する私的年金制度で、厚生年金を補完する役割を持っています。

基金は、厚生年金の一部を代行し、さらに独自の上乗せ給付を行うことで、老後の生活を安定させるサポートを提供します。

保険料は、通常の厚生年金と同様に労使で折半されますが、基金独自の上乗せ部分については追加の掛金が必要です。

また、運用は特別法人が管理し、企業のリスクを軽減しつつ従業員の将来の給付を確保します。

しかし、2014年以降は新規の設立が認められておらず、現在では既存の基金のみが運用されているのが現状です。

個人型確定拠出年金(iDeCo)

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、自ら積み立てを行い、将来の年金額を決定する新しい年金制度です。

新NISAの年金バージョンとイメージすると、分かりやすいかもしれません。

加入者は投資信託や預金などから商品を選んで運用し、運用実績に応じて将来の受取額が変動します。

掛金は所得控除の対象となり、税制優遇が受けられるため、節税対策としても有効です。

60歳から受け取りが可能で、受取方法は一時金または年金形式を選べます。

iDeCoは、将来の年金受取額を自分でコントロールできる点がメリットですが、運用リスクが伴うため、運用商品を選ぶ際にはリスク許容度や資産状況を考慮する必要があります。

また、新NISAとは異なり、60歳になるまで掛け金が引き出せない点にも注意する必要があるでしょう。

企業型確定拠出年金(DC)

企業型確定拠出年金(DC)は、企業が従業員の老後資金を支援するために提供する年金制度で、従業員が積立金の運用を自ら行います。

掛金は企業が拠出し、運用する商品は従業員が選びます。

運用の結果に応じて将来の受給額が決まるため、従業員はリスクを取る必要がありますが、成功すれば受取額が増える可能性もあるのが魅力です。

企業型DCには、運用商品の選択肢が多く、資産形成の自由度が高い点が特徴として挙げられます。

また、企業型DCも税制優遇が受けられるため、節税しながら老後の備えをする手段として有効です。

ただし、運用リスクがあるため、各人の金融リテラシーの向上が求められます。

確定給付企業年金制度(DB)

確定給付企業年金(DB)は、将来受け取る年金額が事前に設定されている企業型の年金制度です。

企業が運用の責任を負い、不足が生じた場合は企業が補填します。

これにより、従業員は安定した給付を受けることができる一方で、企業には運用リスクが伴うのが特徴です。

メリットとしては、掛金は企業が負担し、運用益によって将来の支給額が確保されるため、受給額が予測しやすいことが挙げられます。

ただし、企業の財務状況や運用実績に影響を受けるため、安定性が課題だとも言われています。

確定給付企業年金は、特に大企業で採用されていることが多く、従業員の老後の生活を支える重要な制度であることを覚えておきましょう。

年金と確定申告について

ここまで、年金のさまざまな種類について解説しました。

最後に、年金と確定申告に関して解説します。

年金と確定申告ではよく「年金を受給している人が確定申告をする必要があるのか?」という質問を聞きます。

結論からお伝えすると、年金の収入額や他の所得状況によって、確定申告の有無が決まります。

基本的に、公的年金は「雑所得」として扱われ、所得税と住民税の対象となります。

そのため、一定の条件を満たす場合に確定申告が必要です。

具体的には、以下の場合には確定申告は不要になります。

  • 年金の収入金額が年間400万円以下
  • 公的年金以外の所得が20万円以下

上記の2つの条件をどちらも満たしている場合、確定申告は不要です。

その一方で、どちらかの条件を超える収入を得ている方や、年金以外の所得が多い場合は申告が必要になります。

年金受給者は毎年1月頃に日本年金機構から送付される「公的年金等の源泉徴収票」を基に、収入金額を確認できます。

この書類に基づいて、確定申告の対象かどうかを判断しましょう。

なお、確定申告が不要であっても、申告することで過払いの所得税が還付される可能性があるため、状況に応じて申告を行うこともメリットがあります。

確定申告が不要でも、申告した方が良い5つのケース

上記の確定申告が不要な条件に当てはまった場合でも、申告することで税金の還付を受けられるケースがあります。

以下の5つの状況に当てはまる方は、確定申告を検討することをおすすめします。

  1. 家族構成の変更があった場合
  2. 医療費の支払いが多かった場合
  3. 社会保険料や生命保険料を支払っている場合
  4. 災害や盗難に遭った場合
  5. マイホームを購入・リフォームした場合

離婚や配偶者の死別により寡婦(夫)控除が適用されると、最大27万円の控除が受けられます。

家族構成の変更があった方は、税金の還付が受けられるのです。

また、年間の医療費が10万円を超える、または年収200万円未満で総所得の5%を超える場合は「医療費控除」が適用されます。

その他にも、社会保険料控除や生命保険料控除が適用され、税負担を軽減できたり、住宅ローン控除や住宅改修特別控除を受けられたりすることもあります。

基本的には年金の収入金額が年間400万円以下&公的年金以外の所得が20万円以下の方は確定申告が不要です。

しかし、確定申告を行うことで、払い過ぎた税金が返ってくる可能性があるため、手間を惜しまず必要なときは申告を行うことが大切です。

まとめ

社会保障制度の一環である年金は、老後の生活費や障害を持った場合、遺族への支援として重要な役割を果たします。

年金の種類ごとに受給資格や給付額が異なるため、制度を正しく理解することが大切です。

また、確定申告においても、年金受給者が適切な申告を行うことで、税金の還付を受けられます。

年金制度を正しく理解し、自身の老後や家族のための備えを確実にしていきましょう。


太田寛之

太田 寛之

社会福祉士
一障がい児・障がい者相談支援センター 所長

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