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家族の介護が始まる前に知っておくべきこととは?費用・注意点などを解説

家族の介護が必要になる前に、どんな準備ができるかご存知でしょうか?

介護は多くの家庭にとって避けられない現実です。

しかし、早めに準備することで、家族全体の負担を軽減し、スムーズに対応することが可能です。

この記事では、家族の介護が始まる前に知っておくべきことや注意点について解説しています。

介護が必要になったときに焦らないようにするためにも、この記事を読んでいざという時に備えましょう。

谷口 順彦

家族の介護について考えたことがある人も、まだ全然実感のない人もこの記事を読んで、介護について詳しく知っておきませんか?

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介護が必要になる高齢者は年々増えている

介護が必要な高齢者は年々増加しています。

2010年から2020年の10年間で、約227万人も増加し、2025年には約830万人が介護を必要とすると予測されています。

高齢化社会の進行が進む日本では、親の介護を経験する人が増え続けています。

「令和4年版高齢社会白書」によると、75歳以上で要介護認定を受けている人数は421万9千人であり、これは75歳以上の23.1%に相当します。

また、60~65歳でも介護が必要となるケースも見られ、親の介護は多くの家庭にとって避けられない現実です。

(参考:内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」

このような現実を聞くと、少し憂鬱に感じるかもしれませんが「早めの準備を行っているかどうか」が介護生活の充実度に直結します。

家族で介護の必要性を話し合い、準備を始めることが重要です。

介護とは?受けるまでの流れから心がけるべきポイントについて解説この記事では、介護が必要になる一般的なきっかけや、家族での話し合いの大切さ、具体的な介護保険サービスの利用手続きまで、知っておくべきポイントを分かりやすく解説しています。...

親の介護は誰がするの?義務者は?

親の介護は、法律により子どもを含む直系血族や兄弟姉妹に扶養義務(民法)が課されています。

これは経済的支援だけでなく、身体的な介護や介護サービスの費用負担も含まれます。

ただし、子どもの配偶者には法的義務はありません。

では、介護義務を果たさないとどうなるのでしょうか。

最悪の場合は、法的措置を取られることがあります。

例えば、保護責任者遺棄罪に問われると、3か月以上5年以下の懲役となる可能性があるのです。

介護が難しいという状況でも、介護以外の代替案(施設の利用や生活保護の申請など)を考えることが家族の義務であることを覚えておきましょう。

実際、子ども自身の生活が経済的に困窮している場合は、この義務が強制されることはありません。

一人ひとりの状況に合わせた最適な介護の形を模索しましょう。

そのためには、家族で話し合い、最適な解決策を見つけることが大切です。

その結果、親と子ども双方にとって有益な介護の時間を育むことができるでしょう。

親・家族の介護にかかる費用・期間は?

親や家族の介護には多くの時間と費用がかかります。

一般的に、平均的な介護期間は約5年1ヶ月とされており、この期間中に発生する費用は大きく2つに分かれます。

まず、在宅介護の場合、月々の平均費用は約4万8,000円で、5年間の総額は約290万円になります。

一方、施設介護の場合、月々の費用は約12万2,000円で、5年間で約730万円に達します。

さらに、介護開始時には住宅改修や介護用品の購入などの初期費用が発生します。

また、要介護度が上がるにつれて、介護サービスの頻度や質を高める必要があるため、その分、費用も増加していく傾向にあるでしょう。

しかし、これらの金額はあくまで目安です。

実際の費用は要介護者の状態や利用するサービスによって大きく異なるので、介護が始まる前から見積もりしておくことをおすすめします。

(参考:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度)

親・家族の介護が必要になる前に決めておくべき3つのこと

親や家族の介護が必要になる前に、家族内で話し合っておくべきポイントが以下の3つです。

  1. 誰が介護を担当するのか
  2. どこで介護を行うのか
  3. 本人が希望する介護の種類

これらのポイントについて、事前に家族全員で話し合い、役割分担や方針を決めておくことで、介護が必要になった際の混乱を防ぎ、スムーズに対応できます。

ひとつずつ見ていきましょう。

ポイント①:誰が介護を担当するか

介護が必要になる前に「家族内で誰が主に介護を担当するか」を話し合っておくことは非常に重要です。

法律上、直系血族や兄弟姉妹には扶養義務がありますが、誰が優先して介護を行うべきかの順位は法律で定められていません。

そのため、各自の生活状況や能力を鑑みて、家族内で適任者を決める必要があります。

例えば、近くに住んでいる子どもが身の回りの世話を主に担当し、遠方に住んでいる子どもが経済的なサポートを行うといった役割分担の方法があります。

また、介護が一人に集中しないよう、定期的に役割を交代したり、訪問介護サービスを利用するなどして、介護の負担を分散させることも重要です。

介護に関する話し合いを事前に行うことで、いざ介護が必要になった際にスムーズな対応ができるだけでなく、家族全員が協力して介護に取り組む意識を持つことができます。

もし話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることも可能です。

早めの話し合いが、将来のトラブルを防ぐカギとなります。

ポイント②:終末期まで介護する場所

介護をどこで行うかについて、家族内で事前に話し合っておくことは非常に大切です。一般的な介護場所には、以下の3つが挙げられます。

  • 自宅での在宅介護
  • 介護施設への入所
  • 病院での療養

それぞれのスタイルにメリット・デメリットがあるため、本人の希望と家族の負担も考慮して決定することが必要です。

自宅での介護は、住み慣れた環境で過ごせるため、本人にとっては安心感があります。

しかし、家族の負担が大きくなることが予想され、24時間のケアが必要な場合は特に困難です。

介護施設の場合は、専門的なケアを受けられる一方で、費用面で周囲の家族の負担になります。

また、環境の変化による本人のストレスも考慮する必要があるでしょう。

病院での療養は、医療的ケアが必要な場合に適しており、緊急時の対応もスムーズですが、長期入院には制限があるため、終末期の介護には向きません。

どの選択肢を取るにせよ、介護の状況に応じて柔軟に対応できる体制を家族内で相談しておくことをおすすめします。

ポイント③:本人が希望する介護の種類

介護が必要になる前に、本人がどのような介護を望んでいるかを確認しておくことも非常に重要です。

なぜなら、「介護」と一口に言っても、その種類や方法は多種多様だからです。

そのため、本人が希望する介護の種類について事前に話し合っておきましょう。

ただし、介護の状況は変わる可能性が十分にあります。

定期的に意思を確認することを忘れないでください。

介護方針を柔軟に見直すことで、最適な介護を提供し続けられます。

在宅介護以外の選択肢もある【施設入居・ケアマネジャー・介護保険サービス】

介護は在宅で行う以外にも、いくつかの選択肢があります。ここでは主な4つの方法を比較して解説します。

それぞれの選択肢の長所と短所を知っておくことで、客観的に介護者に適したスタイルを選択できるでしょう。

在宅介護

在宅介護とは、要介護者が自宅で生活しながら介護サービスを受ける形態です。

家族や専門のヘルパーが中心となって介護を行います。

在宅介護の最大の利点は、高齢者が慣れ親しんだ環境で日常生活を送れる点です。

また、家族と接する時間を多く持てるため、精神的な安定にもつながります。

在宅介護では、訪問介護や訪問看護、デイサービスなどの介護保険サービスを組み合わせて利用できます。

これにより、介護者の負担を軽減しつつ、要介護者の生活の質を維持することが可能です。

ただし、24時間の介護が必要な場合や認知症の症状が重度の場合は、介護する側の家族の負担が大きくなります。

また、住宅改修や介護機器の導入など、環境整備にかかる費用も考慮する必要があるでしょう。

在宅介護を選択する際は要介護者の状態や家族の状況を十分に検討し、適切なサポート体制を整えることが大切です。

施設入居

施設入居は、24時間体制で専門的なケアを受けられる介護形態です。

主な施設には特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホームなどがあります。

特別養護老人ホームは、比較的重度の要介護者が対象で、費用が比較的安いというメリットがありますが、待機者が多く入居までに時間がかかる場合があります。

一方、有料老人ホームは、費用が高い反面、プライベートな空間が提供され、設備が充実していることが多いです。

施設入居の最大のメリットは、家族の介護負担が軽減される点です。

専門のスタッフによるケアが24時間受けられるため、介護者が心身ともに休息を取ることができます。

また、緊急時の対応が迅速であり、医療ケアが必要な場合にも適切な処置が施されます。

ただし、施設入居にはデメリットもあります。

まず、環境の変化による介護者本人のストレスは在宅介護より大きくなる傾向にあります。

また、費用面でも在宅介護より高額になるため、家族にとっても無視できない問題です。

特に高額な有料老人ホームでは、長期的な費用計画が必要になります。

施設を選ぶ際には、入居者の状態や希望に合った施設を慎重に選ぶことを意識しましょう。

ケアマネジャー

ケアマネジャー(介護支援専門員)は、要介護者やその家族に対して、介護に関するアドバイスやサポートを提供する専門家です。

ケアマネジャーは、介護保険のサービスを適切に利用できるように、個々の状況に合わせたケアプランを作成します。

要介護者の状態や家族の希望を把握し、介護サービスの調整や利用に関する提案を行います。

ケアマネジャーの利用には多くのメリットがあります。

まず、介護に関する知識が豊富なため、最適なサービスの選択や利用方法を提案してもらえます。

また、複数のサービスを効率よく組み合わせ、必要に応じてサービスの見直しや調整を行うことで、介護者の負担を軽減することが可能です。

ケアマネジャーを選ぶ際は、相性も重要なポイントです。

介護者や要介護者と信頼関係を築けるかどうか、また、そのケアマネジャーが地域の介護資源やサービスに精通しているかも考慮する必要があります。

もし不満がある場合は、他のケアマネジャーに変更することも可能です。

介護保険サービス

介護保険サービスは、要介護認定を受けた人が利用できる公的なサービスで、在宅でも施設でも幅広いサポートが受けられます。

大きく分けて、在宅サービス、施設サービス、地域密着型サービスの3種類があります。

たとえば、在宅サービスには訪問介護やデイサービスがあり、要介護者が自宅で生活しながら介護を受けることができます。

これにより、家族の介護負担を軽減しつつ、要介護者も慣れ親しんだ環境で生活を続けることが可能です。

施設サービスには、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などが含まれ、より重度の介護が必要な場合に利用されます。

これにより、家族の介護負担が軽減されるだけでなく、専門的なケアを受けられるため、要介護者にとっても安心です。

介護保険サービスを利用する際、費用は原則1割負担(一定以上の所得がある場合は2割または3割)となっており、経済的な負担が軽減されるのもメリットのひとつ。

介護の負担を軽減したいという方は、介護者の希望に寄り添いながら、ケアマネジャーのサポートを受けることも検討しましょう。

介護保険サービスとは? その仕組みと利用方法を徹底解説介護保険サービスとは、日常生活で介護や支援を必要とする方が1~3割の自己負担額で利用できるサービスです。サービスには居宅介護、施設介護、地域密着型の3つの種類があります。この記事ではそんな介護保険サービスについて対象者や、サービス内容について詳しく解説しています...

介護生活を家族で乗り越えるために、気をつけるべき3つの注意点

介護生活は長期にわたり、家族全員に大きな負担がかかります。

最後に介護生活を乗り越えるために気をつけるべき注意点を全部で3つ解説します。

  • 精神的な負担が大きくなったら誰かに相談する
  • 公的サポートなどを受けて負担を軽減する
  • 自分の私生活も尊重する

ひとつずつ見ていきましょう。

注意点①:精神的な負担が大きくなったら誰かに相談する

介護は長期間にわたり行われるため、介護者にとって精神的な負担が日に日に大きくなってしまいます。

特に、主たる介護者は一人で責任を抱え込みやすく、慢性的なストレスが溜まることも少なくありません。

実際、介護者の約4割がうつ状態にあるという調査結果もあり、精神的なサポートにも目を向ける必要があるでしょう。

こうした状況を防ぐためには、一人で抱え込まず、周囲の人に相談することが大切です。

家族や友人、ケアマネジャーに気持ちを打ち明け、精神的なサポートを得ることで、心の負担を軽減できます。

また、地域の介護者支援センターや同じ立場の人たちと交流できる介護者の会に参加することも、孤立感を和らげる効果があります。

また、直接的な介護ができないという家族の方は「主たる介護者の方を精神面でサポートできないか」を考えてみましょう。

介護者自身の心身の健康を守ることが、長期的に質の高い介護を続けるための基盤となります。

注意点②:公的サポートなどを受けて負担を軽減する

介護には身体的な負担だけでなく、時間・金銭的な負担も伴います。

そのため、介護者が一人で全てを抱え込むような仕組みづくりは避けて、公的サポートを活用することを検討しましょう。

例えば、介護保険サービスを利用することで、専門の介護スタッフに食事や入浴、排泄の介助を任せることができ、家族の身体的な負担が大幅に軽減されます。

また、ショートステイ(短期入所生活介護)を利用すれば、介護者が一時的に休息を取ることが可能です。

特に24時間介護が必要な場合に有効な方法です。

また、介護保険制度以外にも、高額介護サービス費制度や高額医療・高額介護合算制度など、金銭的負担を軽減するための仕組みは日本にはたくさんあります

介護と仕事を両立させる場合は、介護休業制度や介護休暇制度を活用することも一つの手段です。

これらの制度についてもっと良く知りたいという方は、一度地域の包括支援センターやケアマネジャーに相談してみてはいかがでしょうか。

注意点③:自分の私生活も尊重する

介護に専念しすぎて、介護者自身の生活や家族との時間が犠牲になるといったケースがあります。

しかし、自分の生活を大切にしなければ、長期的に質の高い介護を提供することは困難になります。

介護者の方のためにも、自分の私生活を尊重することも覚えておきましょう。

まず、無理のないスケジュール管理を心がけることがポイントです。

介護の時間と自分の時間をしっかり区別し、スケジュールを立てることで、無理なく両立できます。

例えば、訪問介護やデイサービスを利用している時間を自分の時間として活用し、趣味やリフレッシュの時間を確保することが大切です。

また、他の家族・兄弟姉妹と役割分担をしながら、一人の介護者に負担が集中しないようにすることも効果的です。

適度に息抜きをしながら、介護者自身の生活の質を維持することが、結果として良質な介護を提供するための基盤となります。

介護においては、完璧を求めすぎないでください。

それよりも、柔軟な姿勢で長期的に向き合うことが大切です。

まとめ

家族の介護は避けられない現実ですが、事前の準備や話し合いを行っておくことで、負担を軽減することができます。

介護が始まる前に、誰が担当するのか、どこで介護を行うのか、そしてどのような介護を希望するのかを話し合っておきましょう。

また、公的な介護保険サービスやケアマネジャーのサポートを活用することで、家族全体が無理なく介護に取り組める体制を整えられることも忘れないでください。

介護者自身の生活バランスを保つためにも、休息やリフレッシュの時間は必ず確保しましょう。

家族全員が安心して介護に取り組める環境を整えて、みんなでより良い生活を送るようにすることが大切です。


谷口 順彦

特定非営利活動法人日本統合医学協会理事
総合学園JOTアカデミー理事長

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