「100歳まで元気に生きるためには、何が必要なのだろうか」
食事、運動、睡眠。健康長寿について考えるとき、私たちはつい、身体によい習慣や健康法に目を向けがちです。
しかし、長く生きることの意味は、それだけでは語れないのかもしれません。
2026年9月20日付の朝日新聞デジタルに、徳島県三好市でそば店を営む99歳の女性、向井芳香さんの記事が掲載されました。
今回は、向井さんの生き方を紹介しながら、日本統合医学協会が大切にする健康長寿のあり方について考えてみたいと思います。
\この記事をお読みの方におすすめの資格!/

「人生100年時代」を生きる、支えるための生活習慣・介護・社会とのかかわり方など、健康面以外の知識も含め、総括的に学べます。
介護士などの福祉関係者や看護師などの医療従事者の方など、高齢者とのかかわりの多い方に多く受講されています。
合格者は非営利活動法人日本統合医学協会のセンテナリアンアドバイザー資格が認定されます。
学んですぐに実践できるセンテナリアンの食事の基本の軸を学び、日々の食事の見直すことで、①料理時間の短縮②栄養のバランスが取れる③食材・食費の無駄が減るといったことが目指せます。
また、季節ごとの具体的な献立もご紹介。学んですぐに実践いただけます。
東洋医学に基づき、自身の体質や健康状態を把握する方法を学び、季節ごとに適した食材を使ったレシピを紹介します。無理なく続けられる「ちょこっとおかず」レシピも充実しており、毎日の食事に薬膳を自然に取り入れることが可能です。この講座を通じて、家族や自分の健康をサポートし、予防医学としての薬膳の力を身につけてみませんか?
99歳の現役そば店主が語る、働くことと生きること

徳島県三好市の吉野川沿いにある「そば茶屋」。
ここで今も厨房に立ち続けているのが、1927年生まれの向井芳香さんです。
戦争を経験し、終戦の年に結婚。
夫とともに食堂を始め、夫亡き後も長男と店を守り続けてきました。
現在も朝6時過ぎに起き、そばを仕込み、日が暮れるまで店を開けています。
年齢とともに身体の衰えを感じ、以前のようにそばを打つことが難しくなってきたといいます。
それでも、引退は考えていません。
99歳という年齢だけでも驚かされますが、この記事には、単なる「元気な長寿者の紹介」では語りきれない、一人の女性の人生が描かれています。
「働く理由」と「110歳への希望」。記事から見えてくるもの

今回の記事で特に印象的なのは、向井さんが仕事を続ける理由です。
蓄えがなく、働かなければ生活できないという現実を率直に語る一方で、お客さんとの出会いや会話が楽しみでもあるといいます。
働くことは生活のためであり、同時に、人とつながる機会にもなっているのです。
もう一つ心に残るのが、向井さんの将来への思いです。
向井さんが掲げる目標は110歳。
戦争から戦後の復興、現代まで、社会の大きな変化を見つめてきた向井さんは、これから世の中がどう変わっていくのかも楽しみにしているそうです。
99歳になっても、過去を振り返るだけでなく、まだ見ぬ未来に関心を持ち続けている。
もちろん、働き続けなければ生活できないという現実を、美談として片づけることはできません。
それでも、身体の衰えを感じながら仕事を続け、人との交流を楽しみ、未来に希望を持つ向井さんの姿は、私たちに「豊かに年齢を重ねるとはどういうことか」を問いかけているように感じます。
日本統合医学協会の視点|健康長寿とは、衰えないことではなく「続けられること」

99歳になっても現役で働く向井さんの姿を見ると、「働くことが長寿の秘訣なのではないか」と考えたくなります。
確かに、そばを打つ仕事には、身体を動かすこと、人と交流すること、日々の役割を持つことなど、健康に関わるさまざまな側面があります。
WHOの身体活動ガイドラインでも、健康に役立つ身体活動はスポーツや運動に限らず、仕事や家事など日常生活の中にもあるとされています。
また、社会的なつながりも、心身の健康を支える重要な要素として位置づけられています。
ただし、今回の記事を「働き続けることが健康長寿の秘訣」と結論づけてしまうのは、少し違うように思います。
向井さん自身、以前のようには身体が動かなくなっていることを語っています。
それでも、そばを打ち、お客さんを迎え、店を続けている。
今回、私たちが注目したいのは、99歳になっても衰えずに働いていることではなく、衰えながらも、自分にとって大切なことを続けているという点です。
「健康であること」と「自分らしく生きられること」は、同じではない

WHOは「健康的な高齢化(Healthy Ageing)」を、年齢を重ねても、その人の幸福につながる機能的能力を発揮・維持していく過程と捉えています。
ここでいう機能的能力には、移動することだけでなく、人間関係を築くこと、意思決定すること、社会に貢献することなども含まれます。
そして、その能力は本人の身体的・精神的な状態だけで決まるのではなく、周囲の環境や人との関係によっても左右されるとされています。
これは、健康長寿を考えるうえで非常に興味深い視点です。
例えば、足腰が弱くなっても、椅子に座って趣味を続けることはできます。
以前より外出が難しくなっても、家族や地域の人との交流を楽しむことはできるかもしれません。
身体の状態が同じでも、周囲の支えや環境によって、その人ができること、楽しめることは変わってくるのです。
向井さんも、かつてと同じようにそばを打てるわけではありません。
それでも、長男とともに店を守り、今の身体でできる形で仕事を続けています。
もちろん、向井さんが働き続ける背景には経済的な事情もあり、その負担を見過ごすことはできません。
だからこそ、健康長寿の理想を「何歳になっても現役で働くこと」に置くのではなく、年齢や身体の変化に応じて、自分が大切にしてきたことを、無理のない形で続けられることに置いてみてはどうでしょうか。
100歳の自分に、何を残しておきたいか

日本統合医学協会では、身体の状態だけでなく、心のあり方や社会とのつながり、生活環境まで含めて健康を考えることを大切にしています。
その視点から向井さんの記事を読むと、もう一つ考えさせられることがあります。
それは、私たちは健康になるために何をするかは考えても、健康でいることで何を続けたいのかは、案外考えていないのではないかということです。
旅行を楽しみたい。
家族と食卓を囲みたい。
好きな仕事を続けたい。
新しいことを学びたい。
何を大切にしたいかは、人によって異なります。
日常から少し離れ、自分の心身やこれからの暮らしを見つめ直すリトリートも、そうした「自分にとって大切なもの」を確かめる機会になり得ます。
そして、センテナリアンという100年の人生を考えるときにも、単に寿命の長さだけでなく、その先にどんな毎日を送りたいのかという問いが欠かせません。
向井さんの「110歳まで生きて、これからの世の中を見てみたい」という思いは、そのことを改めて感じさせてくれます。
100歳まで元気でいるために、何をするか。
それと同じくらい、
100歳になった自分に、どんな楽しみや役割を残しておきたいか。
向井さんの記事は、健康長寿を考える私たちに、そんな問いを投げかけているのではないでしょうか。
紹介記事・出典
朝日新聞デジタル(2026年9月20日公開)
99歳のそば店主、衰えても店に立つ 「働かねば食べられない」
向井さんの言葉や、実際にそばを打つ姿については、ぜひ元記事をご覧ください。
考察の参考資料
- WHO「WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour」(2020年)
- WHO「From loneliness to social connection: charting a path to healthier societies」(2025年)
- WHO「Ageing」健康的な高齢化の考え方
監修・執筆:特定非営利活動法人 日本統合医学協会
(学術顧問:岡田昌義医学博士)
\この記事をお読みの方におすすめの資格!/

「人生100年時代」を生きる、支えるための生活習慣・介護・社会とのかかわり方など、健康面以外の知識も含め、総括的に学べます。
介護士などの福祉関係者や看護師などの医療従事者の方など、高齢者とのかかわりの多い方に多く受講されています。
合格者は非営利活動法人日本統合医学協会のセンテナリアンアドバイザー資格が認定されます。
学んですぐに実践できるセンテナリアンの食事の基本の軸を学び、日々の食事の見直すことで、①料理時間の短縮②栄養のバランスが取れる③食材・食費の無駄が減るといったことが目指せます。
また、季節ごとの具体的な献立もご紹介。学んですぐに実践いただけます。
東洋医学に基づき、自身の体質や健康状態を把握する方法を学び、季節ごとに適した食材を使ったレシピを紹介します。無理なく続けられる「ちょこっとおかず」レシピも充実しており、毎日の食事に薬膳を自然に取り入れることが可能です。この講座を通じて、家族や自分の健康をサポートし、予防医学としての薬膳の力を身につけてみませんか?



