「これから先も続けていたいことはありますか?」
仕事でも、趣味でも、地域での活動でも構いません。あるいは、気心の知れた人たちと過ごす時間かもしれません。
健康長寿について考えると、食事や運動、睡眠といった身体に関わる習慣に目が向きがちです。
しかし、年齢を重ねた先の暮らしを考えるなら、「自分にとって大切なものと、どうつながり続けるか」という視点もあります。
2026年9月22日付のシネマトゥデイに、ドラマ・映画『踊る大捜査線』シリーズで「スリーアミーゴス」を演じる北村総一朗さん、小野武彦さん、斉藤暁さんのインタビューが掲載されました。
1997年の連続ドラマから29年。
シリーズ最新作で再び3人がそろった今回の記事には、長く続いてきた仕事、仲間との関係、そして好きな役を演じることへの思いが語られています。
今回は3人の言葉を入口に、健康長寿やセンテナリアンの生き方を考えるうえでも大切にしたい「役割」「つながり」「好きなこととの付き合い方」について考えてみます。
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29年を経て再び集まった「スリーアミーゴス」

『踊る大捜査線』シリーズで、湾岸署の署長・神田総一朗、副署長・袴田健吾、刑事課長・秋山春海として親しまれてきたスリーアミーゴス。
北村総一朗さん、小野武彦さん、斉藤暁さんの3人がこの役を演じ始めたのは1997年です。最新作では14年ぶりにスリーアミーゴスとして出演しました。
取材時、3人の年齢を合計すると246歳になることも、インタビューでは笑いを交えながら語られています。
印象に残るのは、年齢そのものよりも、再び3人で演じることへの言葉です。
北村さんはスリーアミーゴスについて「僕らの人生でもめちゃくちゃ大事」と語り、「何よりこの役が好き」と話しています。
小野さんも出演の声がかかったことを喜び、斉藤さんは、また3人で演じられることを「夢のよう」だと振り返りました。
撮影前には3人で喫茶店に集まり、30分ほど台詞合わせをしていたというエピソードも紹介されています。
ここにあるのは、単に「長く仕事を続けている」という事実だけではありません。
長い時間を経ても戻りたいと思える役があり、一緒に取り組める仲間がいる。
そのこと自体が、人生の中で大切な意味を持っていることが伝わってきます。
好きなことは、ずっと同じ形で続けなくてもいい

年齢を重ねても、自分にとって意味のある役割や人とのつながりを持つこと。
これは健康長寿を考えるうえでも興味深いテーマです。
WHOは「健康的な高齢化(Healthy Ageing)」を、単に病気がない状態ではなく、高齢期のウェルビーイングを可能にする「機能的能力」を育み、維持する過程として捉えています。
その機能的能力には、日常生活を営むことだけでなく、学び意思決定すること、人間関係を築き維持すること、社会に貢献することなども含まれます。
またWHOは、社会的なつながりが健康やウェルビーイングに関わることを示しています。
一方で、単純に「交流する人数が多ければよい」というものではありません。
大切なのは、その人にとって意味のある、質の高いつながりです。
スリーアミーゴスの3人には、29年間同じ作品に関わってきたからこそ共有できる時間があります。
しばらく離れていても、再び集まれば戻れる場所がある。
センテナリアンという長い人生を考えるときにも、「何人とつながっているか」だけでなく、「これからも大切にしたい人や場所があるか」という視点は大切なのかもしれません。
そして、今回の記事でもう一つ興味深いのが、今後について尋ねられた3人の答えです。
小野さん、斉藤さんは、また機会があれば出演したいという思いを語っています。
一方、91歳の北村さんは、年齢や身体について触れながら、自身については「たぶんやらない」と答え、2人が次のシリーズで活躍することを楽しみにしていると語っています。
3人とも、この作品や役を大切にしている。
それでも、これからについての答えは同じではありません。
ここに、日本統合医学協会では健康長寿を考える一つのヒントがあると考えます。
好きなことは、ずっと同じ形で続けなくてもいい。
続ける。
少しやり方を変える。
誰かに託す。
少し離れたところから楽しむ。
年齢を重ねれば、身体の状態も生活環境も変化します。
WHOが健康的な高齢化を考える際にも、個人の身体的・精神的な能力だけでなく、その人を取り巻く環境と、それらの相互作用が重視されています。
「生涯現役」であることだけが、豊かな高齢期の姿ではありません。
大切なのは、好きなものとの「ちょうどいい距離」を、その時々の自分で選び直せること。
それもまた、自分らしく年齢を重ねていくことではないでしょうか。
リトリート|「これからも大切にしたいもの」を考える時間

では、自分自身にとって、「これからも大切にしたいもの」は何でしょうか。
毎日の仕事や家事に追われていると、自分が何を好きなのか、これから何を続けたいのかを改めて考える機会は意外と少ないものです。
そこで一つのきっかけになるのが、日常から少し距離を置くリトリートという時間です。
リトリートというと、自然豊かな場所への旅行や宿泊を思い浮かべるかもしれません。
しかし、大切なのは特別な場所へ行くことだけではありません。
日常から少し離れて、自分自身に問いかけてみる。
「今も本当に好きなことは何だろう」
「これからも会いたい人は誰だろう」
「10年後にも残しておきたい時間は何だろう」
そして、ときには、
「もう手放してもいいものは何だろう」
と考えてみる。
健康のために新しい習慣を増やすだけではなく、これからの人生に何を残し、何を手放すのかを考える。
そんな時間も、日本統合医学協会が考えるリトリートの一つのあり方です。
何歳まで続けるかより、「何を大切にしていたいか」

29年という時間を経て、再び同じ役として集まったスリーアミーゴス。
今回の記事から伝わってくるのは、「高齢になっても仕事を続けるべき」という単純なメッセージではありません。
好きな役がある。
再び一緒に取り組みたいと思える人がいる。
そして、これからについては、それぞれが自分の状態や考えに合わせて選んでいる。
100歳まで何を「できるようにしておくか」だけではなく、100歳になった自分にも、何を「大切なものとして残しておきたいか」。
仕事かもしれません。
趣味かもしれません。
人との関係かもしれません。
健康長寿について考えることは、長く生きる方法だけを探すことではなく、その長い時間を、自分はどう生きたいのかを考えることでもあります。
スリーアミーゴスの3人が29年を経て交わす言葉は、そんな問いを私たちに投げかけているように感じられます。
紹介記事・出典
シネマトゥデイ(2026年9月22日公開)
「『踊る大捜査線』スリーアミーゴス、3人合わせて246歳 結成29年の伝説トリオ『何よりこの役が好き』」
北村総一朗さん、小野武彦さん、斉藤暁さんが語る『踊る大捜査線』への思いや、29年にわたる3人の関係については、ぜひ元記事をご覧ください。
考察の参考資料
・WHO「Decade of Healthy Ageing: Baseline Report」(2020年)― 健康的な高齢化と機能的能力について
・WHO「Ageing」 ― 健康的な高齢化における個人の能力と環境の考え方
・WHO「From loneliness to social connection: charting a path to healthier societies」(2025年)― 社会的つながりと健康・ウェルビーイングに関する資料
監修・執筆:特定非営利活動法人 日本統合医学協会
(学術顧問:岡田昌義医学博士)
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