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インタビュー

【健康長寿の秘訣】90歳の「ゲーマーグランマ」に学ぶ、好きなことが人とのつながりに変わる生き方

【健康長寿の秘訣】90歳の「ゲーマーグランマ」に学ぶ、好きなことが人とのつながりに変わる生き方

「これから先、何歳になっても楽しめることはあるだろうか」

年齢を重ねた自分を想像するとき、健康や生活への不安とともに、そんなことを考えた経験はないでしょうか。

仕事や子育てなど、日々の役割が変わっていくなかで、自分が夢中になれるものを持ち続けること。
それは、長い人生を自分らしく過ごすうえで、一つの支えになるのかもしれません。

2020年5月1日付のWebメディア「tayorini by LIFULL介護」に、当時90歳のゲームファン、森浜子さんを紹介する記事が掲載されました。

「ゲーマーグランマ」としてYouTubeでゲーム実況を配信し、多くの視聴者に親しまれてきた森さん。

今回は、その活動を手がかりに、好きなことを楽しみ続ける意味、趣味を通じた人とのつながり、そして健康長寿における生きがいのあり方について考えてみたいと思います。

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50代で始めたゲームが、長く続く楽しみに

森浜子さんがゲームを始めたのは、50代前半のことでした。

おもちゃ屋の前で子どもたちがゲームを楽しんでいる姿を見て、自分もやってみようと思ったことがきっかけだったそうです。

当時は仕事で忙しい毎日を送りながら、夜の空いた時間にゲームを楽しむようになりました。

その後、家庭用ゲーム機の進化とともにさまざまな作品に親しみ、2020年の取材時点ではゲーム歴39年。
80代からはYouTubeでゲーム実況にも取り組んでいました。

森さんのエピソードで興味深いのは、最初から大きな目標を持ってゲームを始めたわけではないことです。

健康のためでも、誰かに評価されるためでもなく、単純に面白そうだと思ったことが、長年にわたる趣味になっていきました。

私たちは年齢を重ねると、「何か役に立つことを始めなければ」「健康のために活動しなければ」と考えてしまうことがあります。

しかし、何かを好きになることに、特別な理由や目的は必要ないのかもしれません。

自分の興味に素直に向き合える時間があること。
その積み重ねも、人生の充実感につながる一つの要素と考えられます。

「自分が楽しい」から「誰かと楽しむ」へ

森さんの活動には、もう一つ注目したい点があります。

それは、一人で楽しんでいたゲームが、YouTubeを通じて多くの人と楽しさを分かち合う活動へと広がっていったことです。

森さんは取材のなかで、自分のゲーム実況を見た人に楽しんでもらいたいという思いや、視聴者からの応援やコメントが励みになっていることを語っています。

もともとは自分自身の楽しみだったゲームに、「見てくれる人に喜んでもらう」という新しい意味が加わったのです。

ここで大切なのは、森さんが誰かに求められて活動を始めたのではなく、自分の好きなことを出発点としていることではないでしょうか。

人とのつながりや社会的な役割というと、仕事やボランティア、地域活動などを思い浮かべるかもしれません。

もちろん、そうした活動も大切です。

一方で、趣味の作品を誰かに見てもらうことや、好きな話題について意見を交わすことも、人との関わりを生み出します。

自分が楽しんでいることが、結果として誰かの楽しみにもなる。

そこには、義務や責任だけではない、自然な形の社会参加があるように思います。

人とのつながりは、同じ場所にいることだけではない

森さんは、ゲーム実況に寄せられる若い世代からのコメントを読むことで、世の中が広くなったように感じるとも語っています。

このエピソードは、現代の健康長寿を考えるうえでも興味深いものです。

従来、人との交流は、直接会って話すことや、地域の集まりに参加することが中心でした。

しかし現在では、インターネットを通じて、住んでいる場所や世代が異なる人とも交流できるようになっています。

世界保健機関(WHO)が2025年に公表した社会的つながりに関する報告書では、孤独や社会的孤立が心身の健康や生活の質に関わる重要な課題として取り上げられています。

ただし、交流する人数が多ければ、それだけ健康になるという単純な話ではありません。

また、オンライン上の交流が、すべての人にとって孤独の解消につながるわけでもありません。

大切なのは、自分にとって心地よい距離感で、他者や社会との関わりを持てることではないでしょうか。

家族と会話すること、趣味の仲間と交流すること、インターネットで共通の関心を持つ人とつながること。

その方法は一つではありません。

森さんの場合、ゲームという趣味が、世代の異なる人々の考え方や新しい文化に触れる機会にもなっていました。

健康長寿を支える社会環境を考えるとき、年齢によって活動の可能性を狭めず、多様な交流の選択肢を持てることにも意味がありそうです。

健康長寿は「できることの多さ」だけでは測れない

では、趣味を楽しみ続けることは、健康長寿とどのように関係するのでしょうか。

WHOは「Healthy ageing and functional ability」(2020年)のなかで、健康的に年齢を重ねることを、年齢を重ねても幸福や生活の充実につながる機能的能力を育み、維持していく過程として捉えています。

そこには、日常生活を送ることだけでなく、学ぶこと、意思決定すること、人間関係を築くこと、社会に貢献することなども含まれています。

つまり、健康長寿は病気の有無や身体能力だけで決まるものではありません。

自分が大切にしたいことを、自分に合った方法で続けられるかどうか。

その視点も重要なのです。

森さんはゲームの攻略について、繰り返し練習することや、楽しみながら取り組むことの大切さを語っています。

ただし、ゲームをすること自体が長寿につながると証明されたわけではありません。

長時間のゲームには、座り続けることによる身体活動の不足や、睡眠への影響などにも配慮が必要です。

健康を考えるうえでは、食事、運動、睡眠、休息などとのバランスも欠かせません。

一方で、自分が楽しみにしていることが日常生活にあるという価値は、身体的な健康指標だけでは十分に表せない部分でもあります。

日本統合医学協会の視点から考えても、心、身体、社会との関わりを切り離さず、暮らし全体を見つめることが大切だと考えます。

センテナリアンを目指す人生に、決まった過ごし方はない

100歳以上の人を指す「センテナリアン」。

人生100年時代という言葉が広まるなかで、センテナリアンの暮らしや生き方に関心を持つ人も増えています。

しかし、長い人生をどのように過ごすかについて、誰にでも当てはまる正解があるわけではありません。

仕事を続けることに喜びを感じる人もいれば、家族との時間や静かな暮らしを大切にする人もいます。

趣味を深めること、新しいことに挑戦すること、慣れ親しんだ日常を楽しむこと。

いずれも、その人にとって意味のある過ごし方になり得ます。

また、好きなことは、生涯を通じて同じ形で続けなければならないものでもありません。

体調や生活環境、興味の変化に合わせて、楽しみ方を変えていくことも自然な選択です。

センテナリアンという長い人生を考えるとき、何歳まで何かを続けられたかという結果だけでなく、その時々の自分に合った楽しみを選べることにも目を向けたいものです。

森さんのように新しい技術を取り入れることも、一つの選択肢です。

大切なのは、年齢によって「もう遅い」と決めつけず、自分の関心や希望を尊重できることではないでしょうか。

好きなことを楽しむために、立ち止まる時間も大切に

ここで、もう一つ考えてみたいのが「リトリート」という視点です。

リトリートとは、日常から少し距離を置き、自分自身の心身や暮らしと向き合う時間のことです。

旅行や自然豊かな場所で過ごすことだけでなく、自宅で静かな時間を持つことも、その一つの形として考えられます。

好きなことに夢中になる時間がある一方で、少し立ち止まり、自分の気持ちを確かめる時間も大切ではないでしょうか。

例えば、毎日の予定や人から求められる役割から少し離れ、こんなことを考えてみるのもよいかもしれません。

「最近、時間を忘れて楽しんだことは何だろう」

「誰かの期待ではなく、自分がやってみたいことは何だろう」

「これからの暮らしに、どんな時間を増やしたいだろう」

忙しい毎日のなかでは、自分が何を好きだったのか、何に心地よさを感じるのかを忘れてしまうこともあります。

そんなとき、リトリートのように日常から少し離れる時間が、自分の興味や希望を見つめ直すきっかけになるかもしれません。

もちろん、常に新しい趣味を探す必要はありません。

何もせずに休むことや、今ある楽しみを大切にすることも、自分らしい選択です。

大切なのは、活動することと休むことの両方を、自分の意思で選べることではないでしょうか。

これからの人生にも、「楽しみ」を見つける余白を

森浜子さんのゲームとの関わりを振り返ると、印象に残るのは、90歳でゲーム実況をしていたという事実だけではありません。

自分が面白いと思ったことを始め、長く楽しみ、その楽しさを人と分かち合う活動へと広げていったことです。

健康長寿について考えるとき、私たちはつい、将来の健康を守るために何をするべきかという視点に偏りがちです。

けれども、長い人生を見据えるなら、これから何を楽しみたいか、誰とどんな時間を過ごしたいかという問いも、同じように大切にしてよいはずです。

センテナリアンを迎えるかどうかにかかわらず、人生のどの段階にも、新しい興味と出会う可能性があります。

そして、その可能性に気づくために、ときには日常を離れて自分自身を見つめる時間があってもよいでしょう。

これから先の人生で、あなたが楽しみにしていたいことは何でしょうか。

その答えは、今すでに身近にあるもののなかに見つかるかもしれません。

紹介記事・出典

tayorini by LIFULL介護(2020年5月1日公開/2020年9月29日更新)

YouTubeで大人気!90歳のゲームファン「ゲーマーグランマ」の長寿の秘訣は、人を喜ばせたい想い

森浜子さんがゲームを始めたきっかけや、長年にわたるゲームへの思い、YouTubeを通じた視聴者との交流については、ぜひ元記事をご覧ください。

考察の参考資料

監修・執筆

監修・執筆:特定非営利活動法人 日本統合医学協会

(学術顧問:岡田昌義医学博士)

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