「健康のために必要な栄養素」と聞くと、たんぱく質やカルシウム、鉄などを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、健康長寿を考えるうえで、もう一つ知っておきたい栄養素があります。
それが「ビタミンD」です。
ビタミンDは、丈夫な骨を維持するために欠かせない栄養素の一つです。
また、筋肉など私たちの体のさまざまな部分にも関わっています。
特に年齢を重ねてからも自分の足で歩き、活動的な生活を続けるためには、骨と筋肉の健康を保つことが大切です。
そのため、ビタミンDについて知ることは、単なる栄養管理だけではなく、将来の健康寿命を考えるきっかけにもなります。
今回は、ビタミンDとはどのような栄養素なのか、不足すると体にどのような影響があるのか、骨や筋肉、健康長寿との関係をわかりやすく解説します。
「ビタミンD」が骨や筋肉、健康長寿とどのように関わっているのか、まずは基本から一緒に見ていきましょう。
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ビタミンDとはどのような栄養素?

脂溶性ビタミンの一つ
ビタミンDは、油に溶けやすい「脂溶性ビタミン」の一つです。
ビタミンという名前から「食事から摂るもの」という印象を持つかもしれませんが、ビタミンDには大きな特徴があります。
それは、食事から摂取するだけでなく、日光を浴びることで皮膚でもつくられることです。
そのため、ビタミンDを考えるときには「何を食べているか」だけでなく、普段どのような生活を送っているかにも目を向ける必要があります。
カルシウムの吸収を助ける
ビタミンDの代表的な働きが、カルシウムの吸収を助けることです。
カルシウムは骨をつくる重要な材料ですが、食事からカルシウムを摂れば、それだけで十分というわけではありません。
摂取したカルシウムを体内で適切に利用することも重要です。
ビタミンDは腸管でのカルシウム吸収に関わり、骨の健康を支えています。
つまり、丈夫な骨を維持するためには、カルシウムだけを見るのではなく、ビタミンDも含めて考えることが大切なのです。
ビタミンD不足とは?

体内のビタミンDが十分ではない状態
ビタミンDが不足しているかどうかは、一般的に血液中の「25-ヒドロキシビタミンD」という物質の濃度などから評価されます。
ただし、必要なビタミンDの量は、食生活だけで決まるものではありません。
日光を浴びる機会や季節、年齢など、さまざまな条件が関係します。
そのため、「この食品を食べていれば必ず大丈夫」と単純に考えるのではなく、食事と生活習慣の両方から考えていくことが重要です。
不足していても気づきにくい
ビタミンD不足について注意したいのが、自分では気づきにくい場合があることです。
栄養素の不足というと、すぐに明確な体調変化が現れるイメージがあるかもしれません。
しかし、ビタミンDが十分ではなくても、日常生活のなかでわかりやすい変化を感じるとは限りません。
だからこそ、体調に問題を感じてから意識するのではなく、普段から食事や屋外での活動などを振り返ることが大切です。
なぜビタミンDが不足するの?

食事だけでは摂取源が限られている
ビタミンDは、あらゆる食品に豊富に含まれているわけではありません。
主な食品として知られているのは、魚類やきのこ類、卵類などです。
| 食品の種類 | ビタミンDを含む主な食品例 |
| 魚類 | サケ、サバ、イワシなど |
| きのこ類 | きくらげ、しいたけなど |
| 卵類 | 卵黄など |
特定の食品だけをたくさん食べるのではなく、日々の食事のなかにさまざまな食品を取り入れていくことが基本となります。
屋外で過ごす機会が少ない
ビタミンDは、日光に含まれる紫外線を受けることで皮膚でもつくられます。
そのため、一日の大半を屋内で過ごしているなど、日光を浴びる機会が少ない生活では、皮膚でつくられるビタミンDが少なくなる可能性があります。
仕事や家事などで屋内にいる時間が長い方は、食生活とあわせて、普段どの程度屋外で過ごしているかを振り返ってみるのもよいでしょう。
ただし、ビタミンDのために長時間強い日差しを浴びればよいということではありません。
紫外線には皮膚への影響もあるため、季節や時間帯などを考えながら、無理のない範囲で日光と付き合うことが大切です。
年齢を重ねることも関係する
健康長寿を考えるうえでは、加齢との関係にも注目したいところです。
年齢を重ねると、若い頃と同じ生活をしていても、食事量が減ったり、外出する機会が少なくなったりすることがあります。
「食事の量が減る」「屋外で活動する時間が短くなる」といった変化が重なることで、ビタミンDを確保しにくい生活になっていないか注意することが大切です。
ビタミンDと骨の関係

骨は常につくり替えられている
骨というと、一度完成したらそのまま変化しないもののように感じるかもしれません。
しかし、実際の骨は古い部分が壊され、新しい骨がつくられるという代謝を繰り返しています。
そのなかで、ビタミンDはカルシウムの吸収などを通して骨の健康に関わっています。
不足すると骨が弱くなる可能性がある
ビタミンDが著しく不足すると、カルシウムを十分に利用しにくくなり、成人では骨軟化症などにつながることがあります。
また、年齢を重ねるほど意識したいのが骨粗しょう症です。
骨粗しょう症になると骨がもろくなり、転倒などをきっかけとして骨折する危険性が高くなります。
ただし、骨の健康はビタミンDだけで決まるものではありません。
カルシウムをはじめとした栄養、運動、加齢、生活習慣など、さまざまな要因が関係しています。
「ビタミンDさえ摂れば骨折を防げる」と考えるのではなく、骨を守るために必要な要素の一つとして捉えることが大切です。
ビタミンDと筋肉の関係

健康長寿には筋肉も欠かせない
健康長寿という視点では、骨と同じくらい筋肉も重要です。
立つ、歩く、階段を上る、買い物に出かける。
こうした何気ない日常生活の多くは、筋肉によって支えられています。
筋肉の量や筋力が大きく低下すると、外出や運動の機会が減り、それによってさらに体を動かさなくなるという悪循環につながる可能性があります。
ビタミンDは筋肉の健康にも関係する
ビタミンDは骨だけではなく、正常な筋肉の働きにも関係しています。
ビタミンDが著しく不足した状態では、筋力低下などがみられる場合があります。
一方で、ビタミンDを多く摂取すればするほど筋力が高まる、という単純な関係ではありません。
筋肉を維持するためには、たんぱく質などを含むバランスのよい食事と、筋肉に適度な刺激を与える運動が基本です。
ビタミンDは、それらとともに筋肉の健康を支える栄養素の一つと考えるとわかりやすいでしょう。
骨と筋肉を守ることが健康寿命につながる

「長生き」だけでなく「元気に生活できる期間」を考える
人生100年時代といわれる現在、単に寿命を延ばすだけではなく、できるだけ長く自立した生活を続けることが重要になっています。
そこで注目されるのが「健康寿命」です。
年齢を重ねても、歩く、食事をする、外出する、人と交流するといった生活を続けるためには、体を支える骨と筋肉の健康が欠かせません。
転倒や骨折を防ぐ視点も大切
高齢になるほど気をつけたいのが転倒と骨折です。
筋力が低下すると体を支えにくくなり、転倒につながることがあります。
そして骨が弱くなっていれば、転倒した際に骨折する可能性も高まります。
骨折をきっかけに活動量が減ると、それまでできていた外出や運動が難しくなり、生活の自立度に影響することもあります。
だからこそ、若いうちから骨と筋肉を維持する生活を意識することは、将来の健康寿命を考えるうえでも意味があります。
センテナリアンを目指すために考えたいこと

一つの栄養素だけで健康長寿は決まらない
100歳以上の長寿者である「センテナリアン」のように、長く健やかに生きるための方法を考えるとき、特定の栄養素や食品だけに答えを求めないことが大切です。
健康長寿は、食事、運動、睡眠、人とのつながり、生活環境など、多くの要素が重なって成り立っています。
ビタミンDもその一つです。
「ビタミンDを摂れば長生きできる」というものではありませんが、骨や筋肉を健やかに保ち、活動的な生活を続けるために意識したい栄養素といえるでしょう。
毎日の生活のなかで意識する
ビタミンD不足を防ぐために、まず意識したいのは特別な健康法ではなく、毎日の生活です。
魚類やきのこ類、卵類などを食生活に取り入れること、適度に屋外で活動すること、そして筋肉や骨に刺激を与えるために体を動かすこと。
こうした習慣は、ビタミンDだけに限らず、健康的な生活を支える基本にもなります。
サプリメントについても「多く摂れば健康によい」とは限りません。
ビタミンDは脂溶性ビタミンであり、過剰摂取にも注意が必要です。
サプリメントを利用する場合や、不足が心配な場合は、自己判断で大量に摂取するのではなく、必要に応じて医師や管理栄養士などの専門家に相談しましょう。
まとめ

ビタミンDは、カルシウムの吸収を助け、骨の健康を支える重要な栄養素です。
また、筋肉の健康とも関わりがあります。
年齢を重ねても自分の足で歩き、活動的な生活を続けていくためには、骨と筋肉の両方を守っていくことが欠かせません。
そのためには、ビタミンDだけに注目するのではなく、バランスのよい食事、適度な運動、屋外で過ごす時間など、毎日の生活全体を整えていくことが大切です。
センテナリアンのような健康長寿を考えるうえでも、大切なのは「これさえ摂ればよい」という一つの方法を探すことではありません。
日々の食事や運動を少しずつ積み重ね、将来も元気に動ける体を維持していく。
その長い積み重ねこそが、健康寿命を支える土台となるのではないでしょうか。
監修者

谷口 順彦
特定非営利活動法人日本統合医学協会理事
総合学園JOTアカデミー理事長
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