誰かに勧めたものを気に入ってもらえたとき。
頼まれごとを引き受け、相手の表情が少し明るくなったとき。
私たちは、日常の何気ない場面で「自分がここにいる意味」を感じることがあります。
人生100年時代の健康長寿を考えるとき、食事や運動と同じくらい、こうした人との関わりにも目を向けてみたいものです。
2023年8月25日公開の「グローバル医職住ラボ」の記事では、福島市で化粧品の販売に携わる堀野智子さんが紹介されました。
堀野さんは1923年生まれ。
1962年からポーラの仕事を続け、2023年8月21日、100歳で「最高齢の女性ビューティーアドバイザー」としてギネス世界記録に認定されました。
その後も活動を続け、ポーラは2025年に102歳での記録更新を発表しています。
今回考えたいのは、長く働くための特別な方法ではありません。
堀野さんの歩みを手がかりに、「誰かの役に立つ喜び」と、自分の暮らしを大切にすることの関係を見つめます。
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「人生100年時代」を生きる、支えるための生活習慣・介護・社会とのかかわり方など、健康面以外の知識も含め、総括的に学べます。
介護士などの福祉関係者や看護師などの医療従事者の方など、高齢者とのかかわりの多い方に多く受講されています。
合格者は非営利活動法人日本統合医学協会のセンテナリアンアドバイザー資格が認定されます。
学んですぐに実践できるセンテナリアンの食事の基本の軸を学び、日々の食事の見直すことで、①料理時間の短縮②栄養のバランスが取れる③食材・食費の無駄が減るといったことが目指せます。
また、季節ごとの具体的な献立もご紹介。学んですぐに実践いただけます。
東洋医学に基づき、自身の体質や健康状態を把握する方法を学び、季節ごとに適した食材を使ったレシピを紹介します。無理なく続けられる「ちょこっとおかず」レシピも充実しており、毎日の食事に薬膳を自然に取り入れることが可能です。この講座を通じて、家族や自分の健康をサポートし、予防医学としての薬膳の力を身につけてみませんか?
「相手が喜ぶ」が、続ける理由になる

堀野さんが仕事について語る際、中心にあるのは販売実績や記録そのものではなく、顧客がきれいになり、喜んでくれることです。
ポーラの発表でも、長く仕事を続けてきた理由として、その喜びが紹介されています。
美容の仕事には、商品を説明するだけでなく、相手の希望に耳を傾け、季節や暮らしの変化に合わせて提案する場面があります。
そこで生まれる反応は、数字に表れない仕事の手応えにもなるでしょう。
ここで注目したいのは、堀野さんの年齢よりも、本人が大切にしてきた仕事の意味です。
「自分が何を達成したか」だけではなく、「相手にとってどんな時間になったか」。
そうした視点は、仕事以外にも広がります。
料理を一品分け合う、経験を尋ねられて答える、近所の人に声をかける。
相手の反応がいつも見えるとは限りませんが、小さな関わりが、自分の一日を豊かに感じさせることがあります。
もっとも、他者の役に立つことを常に求める必要はありません。
誰かに頼る日や、何も引き受けない日があってもいい。
その余地を含めて、人とつながれることが大切なのではないでしょうか。
健康長寿は、心・身体・環境の重なりで考える

世界保健機関(WHO)は、健康的な高齢期を、本人が大切にすることを行える力を育み、保つ過程として捉えています。
その力には、移動すること、学ぶこと、人間関係を築くこと、社会に貢献することなどが含まれます。
病気がないことだけで決まる考え方ではありません。
この視点から見ると、堀野さんの活動を支える条件も、本人の気持ちや身体の状態だけでは説明できません。
通うための交通手段があること、仕事をする場があること、顧客との関係が続くこと。
心と身体の力は、周囲の社会や生活環境との関わりの中で発揮されます。
たとえば、外出したい気持ちがあっても、移動手段がなければ出かけにくくなります。
反対に、短い時間でも参加できる場所や、困ったときに手助けを頼める人がいれば、選べる活動が広がるかもしれません。
もちろん、堀野さんがセンテナリアンとして活動を続けてきた理由を、これらの要素から特定することはできません。
一人の人生を健康法の証拠にせず、誰もが自分の希望に沿った生活を選べる条件を考えること。
それこそ、健康長寿の大切な視点です。
社会との接点は、「現役で働く」以外にもある

仕事を続ける姿が注目される一方で、働き方や暮らし方には人それぞれの事情があります。
仕事をしない選択も、体調に応じて活動を減らす選択も、その人らしさを損なうものではありません。
内閣府の「令和8年版高齢社会白書」では、直近1年間に何らかの社会活動へ参加した65歳以上の人のうち、生きがいを感じていると答えた割合は84.6%で、活動に参加していない人より23.0ポイント高いと報告されています。
ただし、この数字は社会活動が生きがいを生み出したと証明するものではありません。
もともと活動しやすい健康状態や環境の違いも関係し得ます。
大切なのは、参加の形を一つに決めないことです。
地域でのボランティア、趣味の集まり、家族との会話、電話での近況報告。
対面が難しければ、手紙やオンラインで関わる方法もあります。
さらに、「役に立つ側」だけが社会の一員なのではありません。
相談する、教えてもらう、支えを受け取ることも、人と人との関係をつくります。
センテナリアンを含む高齢者の暮らしを考える際にも、活動量の多さではなく、その人が望む関わりを尊重することが出発点になります。
学び続けられる場所が、日々の選択肢を広げる

ポーラの発表によると、堀野さんは新製品や季節の美容についての研修・勉強会に参加してきました。
長年の経験を持ちながら、新しい情報に触れる機会も生活の中にあったことが分かります。
学びというと、資格取得や難しい知識を思い浮かべがちです。
しかし、いつもと違う料理を試す、知らなかった地域の行事を調べる、使い慣れない機器の操作を教わることも、身近な学びです。
年齢にかかわらず、「知らなかったことを知る」「試してみて、自分に合うか確かめる」という過程には、毎日を単調にしない面白さがあります。
うまくできなかったときにやり直せる環境や、質問できる相手がいることも重要です。
学びそのものが長寿を保証するわけではありません。
それでも、経験を重ねた人が新しいことを知る機会を持てる社会は、年齢だけで可能性を区切らない社会だといえるでしょう。
立ち止まる時間が、「これからの役割」を見つける

人に喜ばれることが励みになる一方で、毎日を誰かの期待に応える時間だけで埋めてしまうと、自分の希望を見失うこともあります。
そこで取り入れたいのが、日常から少し距離を置いて自分と向き合う「リトリート」という考え方です。
遠くへ旅行する必要はありません。
散歩の途中でベンチに座る、週末の朝にお気に入りのお茶を飲む、スマートフォンを置いて窓の外を眺める。
短い時間でも、普段の役割から離れてみることはできます。
そのとき、「最近、誰との時間が心地よかっただろう」「続けたいことと、少し減らしたいことは何だろう」と自分に尋ねてみます。
答えが出なくても構いません。大切なのは、周囲の期待ではなく、自分の気持ちを確かめる機会を持つことです。
リトリートに病気を治す効果を期待するのではなく、自分の暮らしを見直すための時間として捉える。
元気な日は外へ出かけ、休みたい日は無理をしない。
そんな選択を重ねることも、自分らしい健康長寿の一部でしょう。
堀野さんの物語が伝えてくれるのは、「100歳まで働かなければならない」という目標ではありません。
年齢だけで役割を決めず、誰かと関わる喜びも、自分をいたわる時間も大切にできるという可能性です。
長く生きることの豊かさは、何年働いたか、どれだけ活動したかという数字だけでは測れません。
明日も会いたい人がいる。続けてみたいことがある。そして、休むことも自分で選べる。
そんな一日一日の積み重ねに、健康長寿を考えるヒントがあるのかもしれません。
紹介記事・出典
グローバル医職住ラボ(2023年8月25日公開)
長寿社会において自分らしく楽しく生きるとは?― 堀野智子さん、100歳でなお現役の販売員としてギネス認定
100歳でギネス世界記録に認定された堀野智子さんの仕事への向き合い方を紹介した記事です。
堀野さんの歩みや、長く仕事を続けることへの思いについて、詳しくは元記事をご覧ください。
参考資料
- 株式会社ポーラ『「最高齢の女性ビューティーアドバイザー Oldest beauty advisor (female) 」としてポーラのビューティーディレクターが100歳でギネス世界記録™を達成』(2023年)― 堀野智子さんの経歴、認定記録、仕事への思い
https://www.pola.co.jp/about/news/20230821-01/index.html - 株式会社ポーラ『「最高齢の女性ビューティーアドバイザー Oldest beauty advisor (female) 」として102歳でギネス世界記録™を更新』(2025年)― 記録更新と研修・勉強会への参加状況
https://www.pola.co.jp/about/news/20250508-01/index.html - 世界保健機関(WHO)『Healthy ageing and functional ability』(2020年)― 健康的な高齢期の考え方、身体機能と社会・生活環境の関係
https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/healthy-ageing-and-functional-ability - 内閣府『令和8年版高齢社会白書』(2026年)― 高齢者の社会活動への参加状況と生きがいの感じ方
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2026/html/zenbun/s1_2_3.html
監修・執筆:特定非営利活動法人 日本統合医学協会
(学術顧問:岡田昌義医学博士)
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