「この年齢からでは遅いかもしれない」。
新しい趣味や活動に興味を持っても、そんな言葉が頭をよぎることがあります。
体力や暮らし方が変われば、以前と同じようには取り組めないこともあるでしょう。
では、年齢を重ねることは、参加できる世界が小さくなることなのでしょうか。
2026年9月23日、フィットネス専門メディア「FITNESS LOVE」は、第37回ジャパンオープン選手権大会の結果を報じました。
そのなかで目を引くのが、90歳のボディビルダー、金澤利翼選手が51歳の宮前亜寿香選手とミックスドペアボディビルに出場し、4位となったという事実です。
今回は記録や筋肉の大きさよりも、「自分にとって意味のある活動に参加できること」に注目します。
健康長寿を、心と身体、そして人との関係から捉え直してみましょう。
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「人生100年時代」を生きる、支えるための生活習慣・介護・社会とのかかわり方など、健康面以外の知識も含め、総括的に学べます。
介護士などの福祉関係者や看護師などの医療従事者の方など、高齢者とのかかわりの多い方に多く受講されています。
合格者は非営利活動法人日本統合医学協会のセンテナリアンアドバイザー資格が認定されます。
学んですぐに実践できるセンテナリアンの食事の基本の軸を学び、日々の食事の見直すことで、①料理時間の短縮②栄養のバランスが取れる③食材・食費の無駄が減るといったことが目指せます。
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90歳の出場から見えてくる「参加」の価値

注目したいのは順位だけではない
大会では男子ボディビル、女子フィジークなどの競技に加え、ミックスドペアボディビルが実施されました。
金澤選手と宮前選手は、世代の異なる二人で同じ競技の舞台に立っています。
そこにどのような思いや練習の積み重ねがあったかは、今回の記事からは分かりません。
しかし、大会に参加したという事実だけでも、私たちに考えるきっかけを与えてくれます。
普段の生活でも、一人では始めにくいことが、誰かと予定を合わせることで実現する場合があります。
散歩、習い事、地域の催し。
大切なのは、一緒に取り組む相手と同じ年齢や体力である必要はないということです。
互いの違いを前提に、共通の時間を持つことにも意味があります。
「できる人」だけの物語にしない
同日には、第1回日本車いす男子ボディビル選手権大会も開催されました。
一つの会場で複数の競技が行われたことは、スポーツへの関わり方が一様ではないことを考える材料になります。
ただし、競技会への出場には準備や条件が伴います。
今回の参加者の姿を見て、誰もが同じ挑戦をすべきだと考える必要はありません。
観客として応援する、活動を支える、無理のない範囲で身体を動かす。
参加の形はさまざまです。
健康長寿を考える際には、「どこまで達成したか」だけでなく、「自分に合った関わり方を選べるか」という視点も持っていたいものです。
健康長寿は、筋力や年齢だけでは測れない

WHOが重視する「大切なことをできる力」
世界保健機関(WHO)は、健康的に年齢を重ねることを、年齢を重ねても本人のウェルビーイングを支える機能的能力を育み、保つ過程として捉えています。
その能力には、移動することだけでなく、学ぶこと、人間関係を築くこと、社会に貢献することなども含まれます。
ここで重要なのは、身体の状態だけが健康長寿を決めるわけではないという点です。
たとえば、外出しやすい道、参加を歓迎する集まり、困ったときに相談できる相手がいれば、活動の選択肢は広がります。
反対に、意欲があっても移動手段や周囲の理解が乏しければ、できることが制限される場合があります。
金澤選手の出場も、特別な体力を称賛するだけで終わらせるのではなく、人が活動を続けられる環境とは何かを考える入口にできそうです。
もちろん、今回の報道だけで本人の健康状態や生活環境を判断することはできません。
センテナリアンにも、それぞれの暮らしがある
100歳以上の人を指す「センテナリアン」についても同じことがいえます。
金澤選手は90歳であり、センテナリアンではありません。
それでも、長い人生における活動の続け方を考えるうえで、今回のニュースには通じるものがあります。
センテナリアンの暮らしを一つの成功例にまとめることはできません。
競技に親しむ人もいれば、読書や料理、家族との会話を大切にする人もいるでしょう。
ここで挙げたのは暮らし方の例であり、特定の人の習慣を示すものではありません。
誰かの生き方を正解とするのではなく、その人が何を大切にしたいかを尊重する姿勢こそ、健康長寿を考える土台になります。
身体を動かすときこそ、自分の基準を持つ

競技者のトレーニングを、そのまままねない
筋力を保つことは、日々の生活動作と関わります。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者に対し、筋力・バランス・柔軟性などを組み合わせた運動を週3日以上、筋力トレーニングを週2~3日行うことを推奨しています。
ただし、これらは一人ひとりの健康状態や身体機能に合わせて調整することが前提です。
特に伝えたいのは、ボディビル競技の練習と、日常生活のための運動は同じではないということ。
重い器具を使うことや回数を増やすことが、すべての人に適しているわけではありません。
痛みや持病、転倒への不安がある場合は、医師や運動の専門家に相談し、安全な方法を選ぶことが大切です。
「今より少し」を続けられる工夫
運動習慣がない方なら、座ったまま過ごす時間の合間に立ち上がる、用事のついでに短い距離を歩く、椅子からの立ち座りを無理なく行う、といった小さな行動から考えられます。
立つことや歩くことが難しい場合も、身体の状況に応じて可能な動作を探す方法があります。
数字を達成できない日は失敗、と考えなくてもよいのです。
今日はどの動きなら心地よく取り組めるか。翌日に疲れを残していないか。
自分の状態を確かめながら調整することが、続けやすい習慣につながります。
大切なのは、他人の記録ではなく、自分の暮らしに合う基準を見つけることです。
挑戦を続けるために、休む時間と居場所をつくる

休息も「自分で選ぶ」活動の一つ
何かに取り組み続けるというと、休まず努力する姿を思い浮かべるかもしれません。
しかし、好きな活動と長く付き合うには、休む日や取り組み方を変える日があってもよいはずです。
体調を確かめ、予定を調整することは、挑戦をあきらめることとは異なります。
日本統合医学協会が扱う健康長寿やウェルネスの視点から考えても、身体を動かす時間だけに目を向けるのではなく、心の余裕や周囲との関係、過ごす環境にも視野を広げることには意味があります。
何を続け、何を休むか。
その判断を本人ができることも大切です。
日常のリトリートで、自分の望みを確かめる
そのための一つの方法が、日常から少し離れ、自分と向き合う「リトリート」の時間を持つことです。
遠くへ旅行する必要はありません。
静かな公園で過ごす、いつもと違う場所でお茶を飲む、予定を入れずに自分の気持ちを整理する。
そんな時間も、自分にとってのリトリートになり得ます。
これは病気を治す方法ではなく、自分のペースを確認するための過ごし方の提案です。
「また参加したいことは何だろう」
「今は少し休みたいのだろうか」
答えを急がず考えることで、これからの暮らしの選び方が見えてくるかもしれません。
90歳の金澤選手が競技の舞台に立ったというニュースは、全員が同じ目標を持つべきだと教えるものではありません。
自分なりの活動を選び、人と関わり、ときには休みながら次の一歩を考える。
年齢で可能性を決めつけず、今日の自分に合う参加の形を探していくこと。
その積み重ねの先に、それぞれの健康長寿があるのではないでしょうか。
紹介記事・出典
FITNESS LOVE(2026年9月23日公開)
ボディビル部門の頂点は“元競輪選手”小坂元雄斗の手に!90歳の鉄人・金澤利翼が男女ペアで出場=9.23 JBBFジャパンオープン選手権2日目結果
90歳の金澤利翼選手がミックスドペアボディビルに出場した様子や、大会の結果を紹介した記事です。
世代を超えた競技への参加について、詳しくは元記事をご覧ください。
参考資料
- 世界保健機関(WHO)『Healthy ageing and functional ability』(2020年)― 健康長寿における機能的能力と、本人の価値観・社会環境との関係
- 厚生労働省『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』(2023年)― 高齢者の身体活動・筋力トレーニング・個人差に応じた運動の考え方
- 公益社団法人 日本ボディビル・フィットネス連盟『第37回ジャパンオープン選手権大会』(2026年)― 大会開催日・会場・競技種目の確認
監修・執筆:特定非営利活動法人 日本統合医学協会 (学術顧問:岡田昌義医学博士)
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